- 人体構造を覚えようとするな
- 比率と構造を考えながら模写しろ
- 比率と構造で考えると萌えイラストも描きやすくなるよ
僕はあまり初心者のうちから人体構造について深く学ぼうとするのは意味ないと思ってるんですけど、ネットでイラスト上達本とかオススメされてるとつい買っちゃうこともあるかもしれない。
たとえば、初心者向けの本としてよく名前があがる「やさしい人物画」。せっかく買ったからにはちゃんと活かしたいですよね。
この本、ある程度実力がある人には非常に良い本なのですが、初心者にはかなーり難しいです。特にいかにも美術って感じの絵画ではなく、「イラスト」描きたい人にとっては中々扱いづらい代物でしょう…
というわけで今回は「イラストを描きたい初心者」に向けてこの本の使い方を説明したいと思います。
かなり地道な方法だけど、そのぶんちゃんと上達するから参考にしてほしい。
目次
人体構造を覚えようとするな
「やさしい人物画 使い方」関連の記事でよく出てくるのが「骨格を模した棒人間を描こう」とか「人体構造を覚えよう」とかなんだけど、初心者のほとんどはいきなりこれをやっても上手くいきません。
なぜか? 初心者は模写が下手だからです。
模写関係ある?
めっちゃあるぞ。
模写ができないということは「見ているものを正確に理解できてない」ということです。そんな状態の初心者が、人体構造を覚えようとしても、それをイラストに上手く活かせません。
なにせ覚えたはずの「人体構造」は、実は初心者の勝手な思い込みに歪められためちゃくちゃな人体構造です。それを使っても「下手な絵」からは脱出できません。
なので、まずは「人体構造を覚えようとする」はやめましょう。最初は覚えるのではなく、正確に模写できるかどうかを確認しましょう。
やさしい人物画の正しい使い方
では実際にどうやって使っていけば良いのか? まさか全ページ模写しろとでも言うのか…?
まぁそれでも良いけど、流石にそれは大変なのでポイントを絞っていくぞ。
比率で描くことを手で覚える
まず模写すべきところは最初のページ。
※日本語訳版である本誌を掲載するのは著作権的にNGだと思うので、著作権切れにより無料公開されている原本を参考として載せておきます。
大体18ページから37ページくらいまでが「人体のプロポーション・骨の比率」に関する説明です。まずここに載ってる絵を片っ端から模写してみましょう。
「面倒」と思った初心者の方は、この本は上手く使えません。それくらい大切な部分です。
このページの何が重要なのかというと「比率」です。こう言うと「よし!じゃあ比率を覚えよう!」ってなりがちですが、違います。初心者にとって大事なのは「人体の比率を覚えること」ではなく「比率で描くのに慣れること」です。
幸い、このページでは「補助線」や「わかりやすい解説」により「比率で描くための導線」がしっかり張られています。まずはページを熟読し、言われたとおりに絵を模写しましょう。
「これならほとんど元と同じだ!」というレベルまで模写できたら次に進みます。
ちなみに28・29P・38~41Pあたりにはパースに関する部分がありますが、ここは定規が必須なので飛ばしても大丈夫です。
筋肉の形を確認する
続いて、49ページから59ページまで骨と筋肉の詳細な形が記されています。
骨と筋肉の形を確認しておきましょう。とはいえまだ覚える必要はありません。「正確に見れているか?」を確認します。
つまりまた模写か…
さきほど「比率で描くこと」をちゃんと学んだ人なら余裕だと思います。おおむねちゃんと模写できていると感じたら次に進みましょう。
比率、および骨と筋肉の動きを考えて模写する
いよいよ本番です。「比率で描くこと」を意識しつつ「骨と筋肉の動き」を考えて、74ページあたりから最後までずっと続く人物画を模写していきます。
光と影の描き方に関する説明も出てきますが、今は意識しなくて大丈夫です。ここで重要なのは、すでに完成された絵を「比率」で分析すること、そして「骨と筋肉の動き」を考えて自分で再構成することです。
この作業が、これからイラストを描くにあたってめちゃくちゃ重要になってきます。
初心者は「人体構造を覚える」ではなく、出来上がったものを自分で分解し、自分で組み立て直す。これをやって初めて、知識として頭の中に入ってきます。
全ページやる必要はありませんが、なるべくたくさん模写しましょう。模写が簡単と感じるまでやったほうが良いですね。
比率、および骨と筋肉の動きを考えてイラストを描く
仕上げです。仕上げというか、できれば模写と同時並行でやってほしいのがこれです。練習ばっかじゃなく、イラストも描きましょう。
これだけ人物を模写しているんだから、イラストも劇的に上手くなったに違いない…!と思ってる人には申し訳ないですが、上手くなってません。
これまでやってきたのは「比率で分析すること」「構造的に組み立てること」だけです。これはあくまでイラストを描く最初の一歩にすぎません。
でも大丈夫。今まで最初の一歩すらどう踏み出して良いかわからなかったわけです。それができただけでも大きな進歩です。あとはこの経験を活かしてイラストを描いてみましょう。
具体的にどう活かせば良いのかというとこうです。
- 比率を元に上手い人の顔や身体の描き方を分析し、真似する
- 骨と筋肉の構造を意識し、写真や絵を参考に違和感のない構図を作る
今までと変わりません。絵を描く基本は分析と再構築です。
要は「やさしい人物画」を使ってイラストを描くのではなく、「やさしい人物画」で学んだことを活かして、写真や絵を参考にイラストを描くわけですね。
一日一ページ程度で良い
ここまで「全部模写しろ」みたいな話をしてたので、途方もなく感じた人もいるかもしれませんが、そんなに気負わなくても大丈夫です。
目安は「一日一ページ」。何も張り切って素早く終わらせる必要なんてありません。
一番良いのは「イラストを描きつつ、空いた時間にやさしい人物画で学ぶ」という方法です。やさしい人物画をメインにするのではなく、気分転換にするくらいの気持ちでいきましょう。
むしろイラスト描くことより練習がメインになってる奴は危ないぞ。
やさしい人物画は萌えイラストに使えるか?
最後に「やさしい人物画」みたいな本でリアルな人体構造を学ぶことは「萌えイラスト」の上達に繋がるのか?という話だけしたい。
特に僕の描く絵はデフォルメ感強いので、役に立たなそうな感じあるかも。
リアルさとはかけ離れているからな。
実際のところ役に立つか立たないかで言ったら、そんなに役に立ちません。
だってちびキャラとか、実物の人体比率とか筋肉構造とか知らなくても描けるし…
だからこそ、この記事では「人体構造を覚えろ」とは言ってません。初心者の観察力が低いことが理由なのは最初に話しましたが、実は「覚えてもそれがそのままイラストに使えるわけじゃないから」というのも理由の一つでした
ただ、何もかも意味がないわけでもありません。
「腕と脚はちょうど真ん中の位置に関節が来る」「手の長さは股の下まで」みたいな、リアルだろうがデフォルメだろうが変わらない知識もあります。そして「比率で考える」「骨から組み立てる」ことで描きやすくなることも、リアルとデフォルメの共通点です。
ついでに言うと僕にとってはわりと意味あります。
信じられないかもしれませんが、僕は人体構造をちゃんと考えて描いてます。目指している人がリアル寄りなので。
最近描いたこれとかちゃんと胸とか脚の構造考えて描いた。
というわけでまとめるとこう。
- 人体構造を覚えようとするな
- 比率と構造を考えながら模写しろ
- 比率と構造で考えると萌えイラストも描きやすくなるよ
もし、これから本を買うのであれば「どんな知識があればより良い絵が描けるか?」を考えて選びたいですね。
前からしのさんのブログを見ていて、ちょくちょくやさしい人物画が紹介されてたので買ってみようか迷ってたのですが、自粛で時間もたっぷりありますし、この記事で使い方も学べたので買ってみようと思います!
すぐにイラストに活かせるというわけにはいきませんが、基礎的なことを知るには十分な一冊だと思います。
特に書いてある文章は納得できるものばかりで読み応えがあるので、やる気があるなら良い買い物になるかもしれませんね!
ルーミスはいちおう所持してたんで確認してみたのですが、
28、29Pとか38~41Pって初心者が模写するのには難くないですか・・・?(゚ω゚;A)
いや、それでも比率で描く事に「慣れる」ためにはグッチャグチャになっても
とにかく挑戦すべきか・・・!?
どんな角度や構図でもそれなりに描けるようになりたいし
でも今は、これはハードルが高いと感じました・・・( ̄∇ ̄;)
パースに関するところですね…!
失念してましたがパースの部分は定規使わないと難しいので、時間がかかりそうなら飛ばしても大丈夫です。
追記しておきます…!
文中にあるしのさんが目指してる方(リアル寄りの)ってどなたなんですか?是非参考にさせて下さい!
すみません。すごく有名な方というわけではなく一人の絵師という感じなので、ここで名前を出して良いものか迷っています。
もしよければtwitterのダイレクトメールやメールアドレスに直接質問をくれれば返信します…!
突然のコメント失礼します。
絵が本気で上手くなりたいと思いサイトを探していたところ偶然、ここに着きました。
拝見させていただき、非常に参考になりました。上記の内容の人物画を買って現在やっているところなのですが、人物は完璧に模写できるようにするべきなのでしょうか?
24歳とかなり遅い年齢ですが、頑張ってみようと思います。
完璧にとは言いませんが、素人目から見て「似てる」と思われる程度には模写できたほうが良いと思います。
意外とちゃんと模写してるつもりでも、明らかに顔の大きさや手の長さ、腰から足のラインなどがおかしくなってしまう人はいます…
これはその人が才能ないとかじゃなく、長さとか大きさの比較をせず「なんとなくこんな感じだろう」と手癖で描いてしまうのが原因です。なので、人物画に載ってるプロポーションや骨の形などを参考にしながら、「なるべく正確に描写する」という癖をつけるのが大事です。
これができないと、イラスト描くときにも上手い人の絵を観察したり、資料を正確に描写するのが苦手なままになってしまうので、上達しづらいのです…
わざわざ返信ありがとうございます。
やります
筋肉や骨格も勉強せずに人物描くなんて、九九も知らずに方程式解くのと同じです。
非効率的の極み。
それはまぁそうなんですけど、そもそも別に「今後一切、筋肉や骨格の知識を覚えるな」とは言ってないです。
模写ができてない状態で覚えようとしても、その知識は正確な筋肉の形ではないから、まずはちゃんと模写できるようになったほうが良いよってのがこの記事の趣旨でした。
ほえーって見てたらあかりちゃんが!
やさしい人物画、数年本棚に眠ったままでした。記事を参考にして頑張ってみます!
ぜひ!試してみてください…!
最近、自分のイラストが無理すぎて、一日一時間くらいで描くのやめて次の日に持ち越し的なのをやって、ルーミスの模写やクロッキーとか練習に逃げてるのですが、やばいですか?・・・(;^ω^)
1日1時間でもイラスト描いてるなら大丈夫です!
そのペースで一ヶ月くらい一枚の絵に向き合ってみると、自分の絵のどこが下手でどう改善すればいいか見えてくると思うのでオススメです。
逆に自分の絵が嫌だからと言って、早めに完成させて次に進もうとすると中々改善しない可能性があるので注意です…!