実は絵において「観察力」とかないことに気づいた

観察力なんてなかった

※この記事はnoteに投稿したものと同じ内容になります。

僕はよく「絵を上達させるには観察力が重要」「まずは観察力を鍛えよう」みたいな説明をします。これを信じて、毎日模写練習とかがんばってた人には申し訳ないんですが、

ごめん、実は「観察力」とか存在しなかった…

最近伸び悩んでいるのもあって、自分の練習方法を振り返った結果、そういう結論に至りました。

というわけで以下、具体的にどういうことなのか説明していきます。

「観察力」という説明が間違いだった

もう一度言いますが、「観察力」というのは存在しません。

正確に言うと「物を観察したときの頭に入ってくる情報量」を表す絶対的なパラメーターのようなものはない、ということです。

たとえば観察力5の人は、どんなものを見ても「5の情報」しか入ってこないし、観察力5万の人はどんなものを見ても「5万の情報」が入ってくるみたいな、そういうバトル漫画の戦闘力的な「観察力」はありません。

じゃあデッサンが上手い人とそうでない人の差や、絵の違和感に気付ける人とそうでない人の差は何かというと、単純に「知識と経験」です。

デッサンができるのは観察力があるではなく、「デッサンのコツ」を知っているからです。

絵の違和感に気づけるのは観察力があるからではなく、評価される絵とされない絵に関する情報が人より多いからです。

ただこれだけの話だったんです…

観察力はないが、知識の差はある

というわけで、観察力というパラメーターは存在しませんが、一方で知識の差は存在します。

骨や筋肉などの基礎知識もそうだし、デッサンや模写の描き方も知識です。

あるいはよく「〇〇を描くコツ!」みたいなの紹介している動画や記事などがありますが、あれも知識です。

描けないのは才能がないとか、何かの能力が不足しているとかではなく「描くために必要な知識」が足りてないからです。

ただ、個人的にこの差はそこまで重要じゃないかと思います。知識は見たり読んだりしただけでは定着しないからです。

重要なのは知識よりもむしろ後述する「経験」だと、僕は思っています。

観察力はないが、経験の差はある

知識と同様に差が出るのは経験です。同様にというか、絵においては「経験」のほうが圧倒的に重要です。

経験というのは具体的に何かというと自分の「成功した体験」と「失敗した体験」です。言っちゃえば、たくさん描けってことですね。

重要なのはただ描いて終わりじゃなくて「成功したのか失敗したのかを明らかにする」ところまで含めて「経験」ということです。

それをやらないと経験としては薄いので注意してください。

経験はあるが、経験値はない

経験っていうと、ゲーム的な発想で「色んな絵をたくさん描いて経験値を貯めれば良いんだ!」みたいに思う人、もしかしたらいるかもしれません。

しかし、経験はあっても「経験値」は存在しません。

めっちゃ具体的な話をすると、「ピンク色のフリルがついた可愛い服」を描きたいなら「ピンク色のフリルがついた可愛い服を描く」というピンポイントな経験をしないと、なかなか描けるようにはなりません。

あるいは、「黒髪のクールなかっこいい剣士」が描きたいなら「黒髪のクールなかっこいい剣士を描く」というピンポイントな経験をしないと、なかなか描けるようにはなりません。

「絵をたくさん描けば経験値が溜まってレベルアップし、どんな絵でも描けるようになるはず…!」

なりません。少なくとも二年近く独学した結論としては「なりません」。

「画力」とか「レベル」とかありません。描けるか描けないか、ただそれだけです。

知識と経験は応用できる

ピンポイントな経験をしないといけない。とは言いましたが、それでもずっと模写してれば少しはイラストが上手くなります。

これはなぜかというと、知識と経験は応用できるからです。

模写ができるということは、ある物を正確に写すことができるということです。

正確に写せるということは、正確に理解できるということ。正確に理解できれば、骨や筋肉の知識を吸収しやすいし、資料をイラストに活かすこともできます。

だから模写ばっかやっている人でも、一応少しずつは上手くなります。

ただ効率は悪いです。一人で海外旅行にいくのに、まず英検1級合格を目指すのと同じくらい効率が悪いです。

本当にやるべき練習は「ピンポイントな経験」を積むこと

「結局、知識と経験かよ…」と思うかもしれない。

僕は思ってます。

散々回り道して元の場所に戻ってきたような感覚ですね。

でもやっとプロの仰っていることが、少し理解できてきた気がします。

じゃあ結局どういう練習をすれば良いのか? というと「ピンポイントな経験」を積むのが一番効率が良いと思います。

つまり描きたいキャラを描きたい絵柄で描けということですね。「目指したい絵を真似して好きなものを描け」と言う方がわかりやすいかも。

目指したい絵がないとか多すぎる人は、とりあえずSNSでバズってる絵でも真似すりゃ良いと思います。真似した結果「なんか違うかも?」と思ったならそれも一つの「経験」です。

ただ、初心者にとっては「真似できない」ことが大きな壁になる場合が多いので、それを考えれば「まず模写から始める」のもアリだと思います。

僕が言いたいのは模写やデッサンが意味ないとかそういう話じゃなくて、「練習を続けていれば内部パラメーターが勝手に上昇して、いつの間にか上手い絵が描けるようになる」みたいな発想は間違いという話です。

「資料を写せないから、模写のコツを調べる」「絵を真似したいけど難しいから模写して特徴を掴む」みたいなやり方は結果に直結する合理的なやり方なので良いと思います。

というわけで、以上が二年間の独学の結論です。

今まで誤解を招くような説明してて、申し訳ないと思っております…

ただ、僕自身は今までの発想で絵を描き続けてきたので、過去の記事が100%間違いかというとそうでもないと思いますし、もしかしたら今の考え方も時間が経てば変わるかもしれません。

引き続き地道に絵の経験を積みながら、余裕があったら過去の記事も修正していきたいなと思います。それでは。

6 COMMENTS

匿名

コメント失礼致します
やさしい人物画の模写も意味がないということになるのでしょうか…?

返信する
藤依しの

コメントありがとうございます。

誤解を与えてしまい申し訳ありませんが、「模写」自体が意味ないのではなく、「模写」を続けても「模写」ができるようにしかならないという話です。
模写ができないのであれば、模写することは正しい練習方法です。
そして、やさしい人物画を上手く活かせない人は、「描いてある人体の骨組みや筋肉の形」を正確に理解できないことが原因である場合がほとんどなので、正確に理解するためにまず模写するのは、正しい練習方法ということになります。

ただ、それだけでイラストが描けるようにはなりません…
理解したものを活かすには、実際にイラストを描くなりして「理解したものを活かす」という経験が必要なのです。
俗に言う「アウトプット」というやつですね!

返信する
匿名

結局は某先生がおっしゃってた3ヶ月上達法みたいに作品作り(出力)を中心に足りない部分(入力)を練習するのがいいんですかね…?

返信する
藤依しの

まぁぶっちゃけそういうことですよね。

ただ個人的には「画力を上げよう」という意識で頑張る人より、「この絵を描くために必要な知識と経験を揃えよう」という意識で頑張る人のほうが、上手い絵にたどり着きやすい気がします。
これが記事で話した「ピンポイントな経験」ということになるのかなと思います。

返信する
匿名

記事の内容に大変共感致します。イラストはその魅力を言語化することが難しい(色彩理論等はありますが)ので知識やコツを経験(作品を観たり作ったりすること)から得るために、ある種の勘や分析能力(観察力と表現しようかと思いましたが記事に反するかもしれないため控えました)は必要かもしれません。と思いました(クソザコイラスト初心者の感想)

返信する
藤依しの

ありがとうございますm(_ _)m
初心者のうちからそれに気づけたなら、ガチのクソザコ初心者よりは一歩リードしているはずです…!
一言で言うと、大事なのは「自分で考えること」なのかもしれませんね。「〇〇力」という言葉は「体力・筋力」みたいな、とにかくやりまくれば力がつくという誤解を与えかねないので僕は使うのに躊躇しがちですが、それを理解しているなら大丈夫だと思います。

返信する

藤依しの へ返信する コメントをキャンセル