絵師が使いたがる言葉に『絵柄』ってのがあります。
「絵柄が欲しい」「絵柄が決まらない」「絵柄が安定しない」「絵柄パク」などなど、絵柄にまつわる悩み事は多いですね…
しかし、そもそも『絵柄』ってなんなのか、深く考えたことありますか?
冷静に考えるとなんだろう…好み?デザイン?
あるいは色の塗り方や、共通のテーマなどなど…人によって色々でしょう
おそらく、これはプロの人でもバラバラな答えが返ってくると思います。
それくらい絵柄って曖昧なものなのですが…実は僕、絵柄の正体に気づいています。
結論から言うと、絵柄とは『技法の組み合わせ』のことです!
目次
絵柄の正体についての考察
『絵柄=技法の組み合わせ』である理由
絵柄の正体を明らかにするために、まずは僕の絵を用いて説明したいと思います。
たとえばこのブログで使っているアイコン。
この絵が何で成り立っているかというと、こちらです。
- 水色+オレンジという落ち着いた配色
- 濃い紫で配色にメリハリを付ける工夫
- 目の位置を下げることによって可愛くみせる工夫
- 紫を多めに入れた影色の選択
- 水彩筆によるぼかし
- 重力を感じられる髪の毛の表現
- 髪の一部に肌色を入れることで透明感を出す工夫
- 上部にピンクを入れることで明るさを演出
何やら難しそうな情報がたくさん…
そんな真剣に読む必要はありません、実は全部、ただの『コツ』です!
たとえば「目の位置を下げれば少女っぽくなり、位置を上げれば大人っぽくなる」なんてまさしく『萌えキャラの描き方!』みたいな本で紹介されてそうなコツです。
絵画などの芸術分野では、こういったコツのことを『技法』なんて呼んだりします。
絵に関する技法は数え切れないほどあるので、人によって使う技法の組み合わせは様々です。なので、どれが正解とかそういう話はありません。
重要なのは、僕の絵は僕なりの技法が組み合わさってできているという点です。もし、他人の絵に使われている技法を駆使して描いたら、絵は全然違うものになります。
たとえば、こんな感じですね。
まるで別人が描いたみたいですねぇ
使う技法を変えるだけで、これだけ違うわけですね。ところで、絵がまるで別人のようになった人に対して、よく言われる言葉をご存知でしょうか?
そう、「絵柄が変わった」です。
つまり、絵柄を変えるには『技法』を変えれば良いわけです。
ということは、絵柄というのは『技法』によって作られていることになります!
『絵柄=好み』ではない理由
「技法じゃなくて『好み』じゃない?」って思った人もいそうですね。
確かに絵柄には好みが関わっていますが、『絵柄=好み』ではありません。
これを理解するには『絵柄パク』と言われてしまうパターンを考えればわかります。
たとえば、某海賊主人公みたいなキャラが好きだから「自分も似たようなキャラを描きたい!」と思って、『麦わらの少年』を描いたとします。
この絵、『絵柄パク』って言います?
言いませんよね。言われるのはこっちです。
「ワンピのパクリじゃんw」
好みといっても『描き方が好み』だけでなく『デザインが好み』『シチュエーションが好み』など、色々な種類があります。
実は、ただ好みのデザインをパクっても『デザインの真似』にしかなりません。
『絵柄をパクっている』と言われるのは、目や口の描き方、服の描き方、手足の比率、笑い方などなどを好んで真似している場合だけです。
目や口の描き方、服の描き方…これらは言うまでもなく『絵を描くコツ』つまりは技法です。
ということは、やはり絵柄は好みではなく『技法』だと考えられるわけです!
絵柄と画風の違い
ちなみに似た言葉に『画風』があります。
こちらは作者のテーマや好みを含んだ『絵の共通点』を指すようです。
『個性的な絵柄』は良く聞く一方で、『個性的な画風』という言葉をあまり聞かないのは、『画風』という言葉自体に個性の意味が込められているからかもしれませんね。
絵画などの価値ある美術品に関しては『表面的な情報を指す絵柄』よりも『作者のバックグラウンドも含める画風』を使用するのが望ましいでしょう。
絵柄にまつわる悩みの答え
さて、絵柄の意味がわかったところで、「だからなんなの?」で終わってはいけません…!
なぜ僕がこれほど『絵柄』について深く考えていたかというと、絵柄って初心者を悩ませやすいからです。
しかし、絵柄の正体がわかった今なら、悩む必要はまったくありません!
せっかくなので、絵柄に関する悩みを全て吹き飛ばしましょう!
絵柄が欲しいなら、技法を覚える
よく「自分らしい絵柄がない…」と悩む人がいます。
絵を描くからには、オリジナリティは欲しいもの。
絵柄というのは最も表面に現れやすいオリジナリティなので、それが見つからないことで悩むのは当然のことです…
この問題を解決するには、『技法を覚える』ことが重要です。
絵柄は技法です。
技法は何百時間一人で考えても、急にパッと浮かぶようなものではありません。技法というのは、先人に学び、時には自ら試すことで作り出すものです。
まずは、技法を知り、片っ端から試してみましょう。
そのうち、自分に合った技法を見つけることができます。
そして、あなたなりの技法を駆使して描かれた絵を見て、周りは「これがこの人の絵柄か…」と思うわけです。
絵柄を変えたいなら、新しい技法を使う
「今までの描き慣れた絵柄をやめて、もっと個性的な絵柄を目指したい…」
という人もいると思います。
実はこれも簡単に解決できます。
「絵柄は目指すものではなく、己の中に見出すものだ!」みたいに考えるプロの方もいそうですが、僕はそうは思いません。
絵柄は単なる技法だからです。
絵柄を変えたいのであれば、技法を変えれば良いのです。
技法を変えるには、まだ試していない技法を試しましょう。
メイキングを見たり、記事や人の意見を参考にして、「こういう描き方をすれば理想に近づけるかも?」と思ったら、自分の絵に取り入れてみるのです。
いずれ、前の絵とは違った絵柄に変わります。
ただし、他人からは「前のほうが良かった」みたいなこと言われる可能性もあるので注意です…
絵柄パクは、気持ちの問題
絵柄パクと言うからわかりづらくなるのです!
『技法パク』と呼べばこれが悪いのか良いのかすぐわかります!
古今東西芸術において、技法を真似る(パクる)ことは当たり前に行われてきました。
現代に焦点を当てたとしても、今の所『絵画・音楽・文学などの技法』を制限する法律はないので、絵柄パクはなんの問題もありません!
あるとすれば、表面に表れた絵柄だけを見て口出しする厄介者と、それに踊らされるあなたの問題です。
こういうのを専門用語で『気持ちの問題』と言います。
要はどっちも気にしなきゃ何の問題にもならないわけですね。
ただそうは言っても、たとえば
「有名なイラストレーターとあまりにも酷似している絵柄を使い、同一人物だと勘違いされるような言動を行った上で、イラストを販売する」みたいなことやってると、相手が『自分の利益を害している』と判断して訴訟起こす可能性もあるので、それは注意したほうが良さそうですね。
慣習的・法的に悪ではないからといって、訴訟に発展しないかというと必ずしもそうではないという話です。
『似たような絵柄=価値がない』ではない
というわけで、『絵柄とは技法の組み合わせ』って話でした!
意味が曖昧な言葉を使っていると、間違った考え方をしてしまうことがあるので注意です
マジックワードってやつですね
あと最後に言いたいのが、たまに絵の価値を『個性的な絵柄』に求める人がいるんですけど、必ずしもそうじゃないって話です。
たとえば『流行りの絵柄』に対して、「みんな同じような絵で個性がない」ってよく言われます。
でもこれって別に悪いことじゃないんですね。
流行っているってことはその絵柄に需要があるので、需要があれば多くの人が供給しようとするのは当たり前のことです。
見る側からすれば、絵柄が似ているということは『安心』して見れるわけですし、描く側も流行りに乗ればファンが増えるのでWin-Winです。
イラストを依頼する側にとっても、需要に対応できるイラストレーターのほうが重宝されます。
『芸術的視点』だけで見ると、確かにみんなが同じ絵を描いている状況は面白くないかもしれません。
でも『コミュニティ』や『ビジネス』として考えると、『個性がない=価値がない』とは言えないわけです。
絵ってのは何が正解かわからないもんですね
「個性的な絵柄」に憧れるのは良いことですが、それが絶対だと思い込み他人を批判するのはいただけません…芸術に生きたいなら、もっと視野を広く持ちたいものですね
1コメ、ペンを操作していたら記入され送信されていましました…。大変失礼しました。
記事は楽しく拝見させていただきました!
コメントいただけただけでも嬉しいです☺️
自分が描きたい絵を描いても全部いろんな絵師さんに似てしまったりします…!技法ちゃんとおぼえて頑張ります!
本当にそのとおりですね、私も頑張りたいと思います。